感想:山戸結希監督処女作「あの娘が海辺で踊ってる」

お題「最近見た映画」

 

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 2018年GWに多摩で山戸結希監督の処女作「あの娘が海辺で踊ってる」を見た。この映画は山戸監督が学生時代に撮った自主制作映画だ。

 上映の機会も少なくソフト化もされていない為、見れたらとてもラッキーな作品だ。

 見るのはこれで二回目だったが、劇中に出てくる。この世の終わりのような色の空や、大胆な構図が印象的だった。

 海辺の観光地の田舎町で、AKB48に憧れアイドルを目指す女子高生の舞子(17)は、自意識過剰の性格から周囲に嫌われ、疎まれていた。

 舞子の唯一の友人はクラスで、日本舞踊が得意な菅原(17)だけだった。共依存ともいえる、舞子の菅原に対しての愛情は異常な執着があった。

 彼女にちょっかいをかける、三味線部の男子を見かけると、舞子は全力で敵意をむき出しにしていた。彼女は、菅原との二人だけの世界を求めていた。

 閉鎖された地方で足掻き、都会で何かしたい。見つけたい。変わりたい。と願う舞子の姿は見ていて、とても痛々しかった。

 まるで、彼女は地方から東京を目指す若者の象徴のようだった。

 むかし、私がまだ十代の時に出会った映画監督は「作家の処女作には全てが内紛されている」と語っていた。その時は意味が分からなかったが、今はわかる。

 処女作とは自分の人生を前に進める為に、どうしても作らなければいけない作品だ。それは禊(みそぎ)かもしれない。

 作家の処女作は不思議な魅力や、得体のしれない過剰なまでの作品に対する熱い思いが、フィルムの中で暴走している。

 星の数ほど映画はあるが、そんな作品に出会えるのは本当に稀なことだ。まるで、流れ星のような映画体験だった。

 上映の機会があったら、絶対に抑えておきたい自主制作映画の一本だ。

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